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竜の肝をよこせ。さもなくば、帝国の臣民を一人も余さず喰い続けてやる。と怪鳥は言った。
古代三日月地帯で、空前の繁栄を誇ったタルゴナ帝国ではラナクァ大王の治世十三年を祝う式典の最中、巨大な金色の鳥が宮殿広場に舞い降りた。
吉兆と観じて出迎えた神官は胃の腑におさまり、兵たちは虐殺された。
三つの目を持つ魔鳥は強力無比、日に10人の生贄を要求する怪物だ。大王は自らの地位を守る為に、要求を呑まざるを得ない。
民の叛乱による破滅を恐れる王は立ち去ってくれるよう懇願するが、何者かに招かれたと言い張る鳥は、遠い南の海に棲むという海竜の肝をさしだしさえすれば、無礼を許し立ち退いてやるとの条件を出す。
大王の命でアラム王子は、セス近衛兵隊長と三隻のガレー船を調達、昔、南の海で竜に会ったという隠退した老水夫を下町の酒場で探し出す。
トラブルの予感を孕みながら竜探索に船出する小艦隊を、宮殿の塔にとまった不吉な鳥は三つの目で見送る。
王子の乗る旗艦を指揮するのは、プライドが高く孤立しがちな船長、案内の老水夫は口うるさい酔っ払い、ついてきた巫女は、他界の生物である筈の竜が実在することの秘密を語り、異界から金色の凶鳥を招き寄せた人物がだれであるかをほのめかす。
途中アフリカ沖で海賊に襲われ、艦隊の不仲も表面化、任務の放棄、そして帰国を主張する連中の反乱で、ついに独航することに。
雷鳴が轟く嵐の海域に竜はいた。想像を絶した実体、ちっぽけな人間の攻撃などものともせぬ隔絶した存在だ。あせる王子のボートは粉微塵に、
人の力で手に入れることはかなわぬ竜の肝と知る。
仲間には叛かれ、竜には歯が立たず、肝も手に入らない。都に居座り続ける人食い魔鳥、このまま戻れば死が待つだけの王子は、この状況を切り抜けるのか？
小説です。文字数約7万9500 7章立て122ページ挿絵5葉

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著者寄留先同人リンク http://yaplog.jp/bullcat/